2026年5月12日

ーとびひ(伝染性膿痂疹)とはー

とびひは、医学的な正式名称で「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と呼ばれる皮膚の感染症です。水ぶくれやただれ、かさぶたといった皮膚症状が現れ、それが周囲に広がっていくのが特徴です。「火事の飛び火のように広がる」という様子から、この名前で呼ばれています。
特に乳幼児や小児に多くみられる疾患ですが、大人でも皮膚のバリア機能が低下している場合や、湿疹・虫刺されなどをきっかけに発症することがあります。かゆみを伴うことが多く、無意識に掻いてしまうことで菌が広がり、症状が急速に拡大してしまうケースも少なくありません。
また、とびひは感染力があるため、本人だけでなく周囲の家族や集団生活の中で広がる可能性もあります。早期に適切な対応を行うことが重要な疾患のひとつです。
ーこんなお悩みありませんか?ー

「直径1~2ミリ程度の水泡ができている」
「赤く腫れ、痒みが強い」
「虫刺されを掻いたあとからジュクジュクしてきた」
「水ぶくれができてすぐに破れて広がる」
「かさぶたのようなものがどんどん増えている」
「別の場所にも同じような症状が出てきた」
「家族や兄弟にも似た症状が出ている」
「市販薬を使ってもなかなか良くならない」
こんなお悩みありませんか?
とびひは進行が早く、気づいたときには広範囲に広がってしまっていることもあります。「これってとびひ?」と思ったら、早めに皮膚科を受診することが大切です。適切な治療を始めることで、感染の拡大を防ぎ、早期に回復することができます。
ー原因はー

とびひは、皮膚に細菌が感染することで発症します。特に皮膚のバリア機能が低下していると、細菌が侵入しやすくなります。
⊡主な原因
溶血性連鎖球菌(溶連菌)や黄色ブドウ球菌の感染により発症する疾患です。細菌が感染するきっかけとしては下記が挙げられます。
・虫刺されやあせも、湿疹
・擦り傷や掻き壊しなどの傷口から細菌が侵入する
・汗や蒸れによる皮膚環境の悪化
・鼻の穴をよく触る習慣がある(黄色ブドウ球菌は鼻の中に常在していることがある)
・アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下している
・高温多湿の環境(夏場に多い理由のひとつ)
これらが重なることで、感染しやすい状態になります。
虫刺されやあせもなどを掻いてしまうことで皮膚に傷がつき、そこから細菌が侵入して発症します。さらに掻くことで細菌が周囲へ広がり、「とびひ」の特徴である拡大につながります。また、タオルや衣類の共有、皮膚同士の接触によって他の人へ感染することもあります。
ー主な症状ー


とびひは、皮膚の変化が比較的わかりやすい疾患です。
初期は小さな赤みや水ぶくれから始まりますが、水ぶくれは破れやすく、すぐにただれた状態になります。その後、黄色いかさぶたができ、周囲へと広がっていきます。かゆみによって掻いてしまうことで症状が拡大しやすく、短期間で広範囲に及ぶこともあります。
とびひには2種類あります。
水疱性膿痂疹
比較的よくみられるタイプで、特に乳幼児や小さなお子さまに多いのが特徴です。
⊡特徴
✓薄い水ぶくれ(水疱)ができる
✓水ぶくれは破れやすく、すぐにジュクジュクする
✓黄色っぽいかさぶたになる
✓かゆみが強い
✓掻くことで周囲にどんどん広がる
黄色ブドウ球菌が原因で、最初はかゆみを伴う小さな水ぶくれとして現れますが、水ぶくれは非常に破れやすく、すぐにただれた状態になります。その後、滲出液(しんしゅつえき)が周囲の皮膚に触れることで、かさぶたを形成しながら、次々と新しい部位に広がっていきます。顔・体幹・手足など、体のあちこちに広がることがあります。
痂皮性膿痂疹
溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因で起こることが多いタイプです。水ぶくれが目立たず、厚いかさぶた(痂皮)を伴う赤い湿疹が現れます。学童期以降や大人にみられることもあります。
⊡特徴
✓赤みや腫れが強い
✓厚みのあるかさぶた(痂皮)ができる
✓痛みを伴うことがある
このタイプは炎症が強く出やすく、見た目も重症に見えることがあります。まれに全身症状を伴うこともあり、注意が必要です。
ー検査・診断ー
とびひの診断は、主に問診と視診によって行います。症状の現れ方・広がり方・かゆみの有無などを確認します。
必要に応じて、細菌培養検査(皮疹から細菌を採取して種類を特定する)を行うこともあります。原因菌を特定することで、より適切な抗菌薬を選択することができます。
見た目が似ている疾患として
・水痘(水ぼうそう)
・帯状疱疹
・虫刺され
・水泡症
などがあります。正確な診断のうえで治療を開始することが大切です。
通常は診察のみで判断されますが、症状が長引く場合や治療効果が乏しい場合には、原因菌を調べる検査を行うこともあります。
ー治療についてー
抗菌薬の外用(塗り薬)
軽症の場合には、抗菌薬の外用薬を用いた治療が中心となります。患部に直接塗布することで細菌の増殖を抑え、炎症や皮膚症状の改善を促します。初期の段階で適切に使用することで、症状の拡大を防ぎながら比較的早期の改善が期待できます。
使用する際は、患部をやさしく洗浄して清潔な状態に整えたうえで塗布することが大切です。また、自己判断で中断せず、医師の指示に従って継続することが重要です。
抗菌薬の内服
症状が広範囲に広がっている場合や、外用薬だけでは十分な改善が得られない場合には、抗菌薬の内服治療が行われます。内服薬は体の内側から細菌の増殖を抑えるため、より効率的に炎症を改善することができます。
処方された薬は、症状が良くなってきたと感じても自己判断で中止せず、決められた期間しっかりと服用することが大切です。途中でやめてしまうと再発や悪化の原因になることがあります。
患部のケア
治療をスムーズに進めるためには、患部を清潔に保つことが重要です。石けんを使用し1日1〜2回、シャワーで患部をやさしく洗い流しましょう。入浴で他の家族への感染リスクがある場合は、シャワーのみにすることをおすすめします。患部を触った後は必ず手を洗いましょう。皮膚を清潔な状態に保つことで、細菌の増殖を抑えることにつながります。
また、ジュクジュクしている部位や掻いてしまいやすい部位については、ガーゼなどで保護することで外部からの刺激を防ぎ、症状の悪化や拡大を防ぐことができます。洗浄の際は強くこすらず、皮膚に負担をかけないよう注意が必要です。
日常生活での注意点
とびひは、かゆみによる掻き壊しや皮膚同士の接触によって広がりやすい疾患です。そのため、日常生活の中でのちょっとした工夫が、症状の改善や感染予防に大きく関わってきます。
爪を短く整えて掻き壊しを防ぐことや、手洗いをこまめに行うことが大切です。また、タオルや衣類の共有は避け、患部にはできるだけ触れないようにすることも重要です。汗をかいた場合にはそのままにせず、こまめに拭き取ることで皮膚環境を清潔に保つことができます。
ー受診の目安ー

「これくらいなら様子を見てもいいかな?」と迷うこともありますが、とびひは早めの治療が大切です。
✓水ぶくれやジュクジュクした症状がある
✓かさぶたが増えている
✓症状が広がってきている
✓かゆみが強く掻いてしまう
✓市販薬で改善しない、または悪化している
✓家族にも同じ症状が出ている
✓虫刺されや湿疹をかきむしった後に、ジュクジュクしてきた
✓アトピー性皮膚炎があり、症状が急に悪化した
✓発熱や体のだるさを伴っている
とびひは感染力が強いため放置すると広がりやすい疾患ですが、適切な治療で改善が期待できます。早めに治療を始めることが自分の回復だけでなく、周囲への感染拡大を防ぐことにもつながります。
「ただの虫刺されかも」と思わずに、気になる症状がある場合は早めに皮膚科へご相談ください。早期に治療を始めることで、悪化や感染の拡大を防ぐことにつながります。
なお、登園・登校の再開については、症状の改善具合を確認したうえで医師が判断しますので、受診の際にご相談ください。
