2026年5月19日

ー帯状疱疹とはー

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは、体の片側にピリピリとした痛みや違和感が現れ、その後に赤い発疹や水ぶくれが帯状に広がる皮膚の病気です。原因は、子どもの頃にかかった水ぼうそう(水痘)のウイルスが体内に潜伏し、加齢や疲労、ストレス、免疫力の低下などをきっかけに再び活性化することによって発症します。
このウイルスは、神経に沿って活動するため、症状が体の左右どちらか一方に帯状に現れるのが特徴です。特に胸や背中、腹部、顔面などに出ることが多く、強い痛みを伴うことが少なくありません。
発症の初期には、皮膚に目立った変化がないにもかかわらず、「チクチク・ヒリヒリする」「焼けるような痛みがある」「触れると違和感がある」といった神経痛のような症状が現れることがあります。その後、数日以内に赤い発疹が出現し、小さな水ぶくれへと変化していきます。
発症初期は虫刺され、単純ヘルペス、かぶれ等と見分けがつきにくいことがあります。
帯状疱疹は自然に治ることもありますが、適切な治療を行わないと痛みが長引いたり、「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる後遺症が残ることがあります。この神経痛は数か月から場合によっては数十年以上続くこともあり、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
ーこんな悩みありませんか?ー

「皮膚がピリピリ・チクチク・ズキズキ痛む」
「触れると違和感や痛みがある」
「体の片側だけに赤い発疹が出てきた」
「小さな水ぶくれがまとまってできている」
「発疹が出る前から痛みだけがある」
「夜も眠れないほどの痛みがある」
「体の片側だけピリピリと痛い」
「赤い発疹と水ぶくれが帯状に出てきた」
「治ったあとも痛みが続いている」
このようなお悩みはありませんか?
帯状疱疹は最初、皮膚症状が出る前に「なんとなく体がだるい」「皮膚がしみる・痛い」といった症状だけが現れるため、筋肉痛や神経痛と勘違いして受診が遅れてしまうケースがあります。
ー原因は?ー

帯状疱疹の原因は、ヘルペスウイルスの仲間である「水痘・帯状疱疹ウイルス」の再活性化です。
水ぼうそうにかかったことがある方であれば、誰でも帯状疱疹を発症する可能性があります。子どもの頃に水ぼうそうにかかった際、このウイルスは体から完全に消えることなく、神経の中に潜伏した状態で残ります。通常は免疫の働きによって抑えられていますが、何らかのきっかけで免疫力が低下すると再び活動を始め、帯状疱疹として発症します。40~50歳以上で発症しやすい疾患ですが、若い世代(10~30歳代)での発症も実際はよく目にします。
発症のきっかけとなる主な要因は以下の通りです。
・加齢(特に50歳以上)
・疲労の蓄積
・強いストレス
・睡眠不足
・病気や治療による免疫低下
・免疫抑制剤
・ステロイドの長期使用
・糖尿病などの基礎疾患
このように、誰にでも起こりうる病気ですが、特に体調が崩れているときに発症しやすい傾向があります。
ー主な症状ー
初期症状
帯状疱疹の初期には、体の左右どちらか一方にある神経に沿って、痛みや違和感、かゆみなどが現れることがあります。これらの症状は、神経に炎症が起こることで生じます。
多くの場合、こうした違和感や痛みは皮膚に発疹が出る数日前から1週間ほど前に始まりますが、発疹と同時、あるいは少し遅れて現れることもあります。痛みの感じ方は人によって異なり、「ピリピリ」「ジンジン」「ズキズキ」といった表現のほか、「焼けるような痛み」と感じることもあり、その程度にも個人差があり、発熱・倦怠感を伴うこともあります。この段階では皮膚に変化がないため、気づきにくいことがあります。
皮膚症状
初期症状の数日後に、痛みがあった部位に一致して皮膚症状が現れます。
・赤い発疹(紅斑)が出現する
・小さな水ぶくれ(水疱)が帯状に広がる
・水ぶくれが集まってできる
・痛みを伴うことが多い
・体の片側のみに現れる
水ぶくれは時間の経過とともに破れてかさぶたになり、徐々に治癒へ向かいます。ただし、この時期は痛みが強く、日常生活に支障が出ることもあります。
帯状疱疹後神経痛
皮膚症状が治まった後も、数か月〜数年にわたって痛みが続くことがあります。これを「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼び、帯状疱疹の最も代表的な後遺症です。高齢者や重症例で起こりやすく、日常生活に大きな影響を与えることがあります。男性よりも女性に多い傾向があると報告されています。
ー検査・診断ー

帯状疱疹の診断は、主に問診と視診によって行います。痛みが出現した時期や症状の経過、発疹の分布、水ぶくれの有無などを総合的に確認し、診断を行います。
典型的な症状がみられる場合には、視診のみで診断できることが多いですが、発症初期で皮膚症状がはっきりしない場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合には、「ウイルス抗原検査(皮疹からウイルスを検出する)」を実施します。10分程度で結果が出る検査で、診察室で簡単に行うことができます。
また、帯状疱疹に似た症状を示す疾患として、単純ヘルペスや接触性皮膚炎、虫刺されなどが挙げられます。これらと区別するためにも、医師による正確な診断が重要です。
帯状疱疹は早期に治療を開始することが重要なため、疑わしい症状がある場合は、できるだけ早めの受診をおすすめします。
ー治療についてー

抗ウイルス薬(内服薬)
帯状疱疹の治療の中心となるのが抗ウイルス薬の内服です。アメナメビル、バラシクロビルなどが用いられ、体内で増殖しているウイルスの働きを抑えることで、皮膚症状の進行を防ぎ、回復を早める効果があります。
また、早期に内服を開始することで、痛みの軽減や後遺症の予防にもつながります。通常は7日間程度の内服を継続し、症状の経過をみながら治療を行います。
痛みに対する治療
帯状疱疹は痛みを伴うことが多いため、症状に応じて鎮痛薬を使用します。軽度の痛みには鎮痛薬(ロキソプロフェンに代表されるNSAIDsやアセトアミノフェン)が使用され、痛みが強い場合には神経障害性疼痛に作用する薬(プレガバリン、ミロガバリンなど)を併用することもあります。疼痛が非常に強い場合は、発症初期から麻酔科や整形外科の先生と連携して神経ブロック麻酔治療を併用することもあります。
痛みを適切にコントロールすることは、日常生活の質を保つだけでなく、慢性的な痛みへの移行を防ぐうえでも重要です。
外用薬(塗り薬)
皮膚症状に対しては、患部の状態に応じて外用薬を使用します。傷を保護して治癒を促進するために、各種軟膏や、細菌による二次感染を防ぐための外用薬などが処方されることがあります。
また、患部を清潔に保ち、刺激を避けることも回復を早めるために大切です。
帯状疱疹後神経痛の治療
皮膚症状が治癒した後も痛みが続く場合には、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」として追加の治療を行います。神経障害性疼痛に対する内服薬や抗うつ薬、場合によっては神経ブロック注射などを組み合わせながら、痛みの軽減を目指します。
症状の程度や持続期間に応じて治療内容は調整され、継続的なフォローが重要となります。
予防ワクチン(シングリックス)
帯状疱疹は、ワクチン接種によって発症の予防や重症化のリスクを低減することが可能です。特に50歳以上の方では発症リスクが高くなるため、予防接種が推奨されています。
当院でも不活化ワクチン(シングリックス)の投与を行っています。
シングリックスは、帯状疱疹の発症を予防するために開発された不活化ワクチンです。海外を含む大規模な臨床試験において、高い予防効果(90%以上)が確認されています。接種は2回必要で、通常は1回目の接種から2か月後を目安に2回目を行います。さらに、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを大きく低減できる点も特徴のひとつであり、従来のワクチンと比較しても予防効果の高さが期待されています。
⊡シングリックスの対象者
・50歳以上の方(目安)
・帯状疱疹の発症リスクが高い18歳以上の方(免疫機能が低下している方など)
・過去に帯状疱疹にかかったことがある方(再発予防として)
・生ワクチンが接種できない方(免疫抑制状態など)
⊡ワクチンを接種できない方
・免疫機能に影響する病気がある方、または免疫抑制治療を受けている方
・妊娠中、または妊娠の可能性がある方
・過去にワクチン接種で体調不良を起こしたことがある方
・重い基礎疾患(心臓・腎臓・肝臓など)がある方
⊡副反応
・接種部位の痛み・腫れ・赤み
・発熱、倦怠感、頭痛
・筋肉痛、悪寒
ワクチン接種費用
| 項目 | 料金(税込み) |
|---|---|
| 帯状疱疹ワクチン(シングリックス) | 1回あたり 22,000円(2回接種が推奨) |
ー受診の目安ー

「これくらいなら様子を見ても大丈夫かな?」と迷うことはありませんか?以下のようなサインがみられる場合は、できるだけ早く皮膚科へご相談ください。
✓皮膚に違和感やピリピリ・チクチクとした痛みがある(発疹がない段階でも)
✓体の片側に赤い発疹や水ぶくれが帯状に出ている
✓痛みが強く日常生活に支障がある
✓顔や目、耳の周囲に症状がある
✓症状が広がっている、または悪化している
✓皮疹が治まった後も痛みが続いている
✓糖尿病などの基礎疾患があり、免疫力が低下している
帯状疱疹は早期治療が非常に重要な疾患です。「発疹が出てから病院に行こう」と思っていると、治療の開始が遅れてしまいます。痛みやしみる感覚だけの段階でも、帯状疱疹が疑われる場合はすぐにご受診ください。
