乾癬
乾癬

乾癬(かんせん)は、皮膚に赤く盛り上がった発疹(紅斑)と、その上に付着する銀白色のフケのような鱗屑(りんせつ)を特徴とする慢性炎症性疾患です。かゆみを伴うことも多く、発疹は頭皮、ひじ、ひざ、腰など、衣服とこすれる部位にできやすい傾向があります。
乾癬は見た目に強いインパクトがあるため、誤解や偏見を持たれることがありますが、他人にうつる病気ではありません。近年では、皮膚症状だけでなく、関節炎、爪の変形、メタボリックシンドロームとの関連も指摘され、全身疾患の一つと捉えられています。
関節の腫れや痛みを伴う場合は「乾癬性関節炎」と呼ばれ、放置することで関節破壊が進んでしまうため早めの治療開始が必要です。
乾癬の発症には、遺伝的素因と環境要因が複雑に関与しています。明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与すると考えられています。
遺伝的素因
乾癬には遺伝的な背景が関与しているとされており、親や兄弟など近親者に乾癬患者がいる場合、発症リスクが高まることが多くの研究で示されています。遺伝的要因により免疫系の反応性が変化し、炎症が起きやすくなると考えられています。ただし、遺伝的素因があっても必ずしも発症するわけではなく、環境要因が重なることで発症に至るとされています。
免疫異常
乾癬の根本には、体の免疫システムが正常な皮膚細胞に対して過剰に反応してしまう「自己免疫的な炎症反応」があると考えられています。通常であれば数週間かけてゆっくりと入れ替わる皮膚の細胞が、乾癬では免疫の異常な働きによって数日で急速に増殖してしまいます。その結果、皮膚の表面に厚みのある赤みや、鱗屑と呼ばれる銀白色のフケ状のかさぶたが形成されます。この免疫異常には、インターロイキン17(IL-17)やインターロイキン23(IL-23)といったサイトカイン(免疫活性物質)が深く関与しており、これらを標的とする新しい治療薬(生物学的製剤)も開発されています。
外的刺激
外傷(擦れやけが)、日焼け、感染症などがきっかけとなることがあります。ウイルスや梅毒、真菌に感染した際に乾癬そっくりの皮疹が出現することもあり、免疫システムと乾癬には密接な関りがあることが推測されます。
生活習慣
ストレス、喫煙、肥満、アルコールの過剰摂取などが悪化因子となります。
乾癬の皮膚症状は比較的特徴的で、主に赤く盛り上がった発疹(紅斑)に、銀白色のフケのような皮膚(鱗屑)が重なって現れるのが特徴です。これらの病変は円形または楕円形を呈し、はっきりとした境界をもって出現します。発疹の表面は乾燥し、ざらついた感触があり、無理に剥がすと点状の出血を認めることもあります(アウスピッツ現象)。
頭皮やひじ、ひざ、腰など、衣服の摩擦を受けやすい部位に好発し、かゆみを伴うこともありますが、かゆみの有無や程度には個人差があります。また、乾癬は慢性疾患であるため、症状は良くなったり悪化したりを繰り返しながら長期間にわたって続く傾向があります。爪の変形や関節の腫れ・痛み(乾癬性関節炎)を伴うこともあり、全身的な影響がみられるケースも少なくありません。
これらの症状に心当たりがある場合は、乾癬の可能性も考えられます。一度、皮膚科での診察を受けることをおすすめします。
乾癬の診断は、医師による視診と問診が基本です。皮膚の症状の分布や形状、経過などから総合的に判断されます。典型的な乾癬は見た目での診断が可能ですが、非典型的な皮疹が出ている場合など、必要に応じて皮膚の一部を採取する「皮膚生検」を行うこともあります。
また、関節症状がある場合は、レントゲンやMRIなどの画像検査が必要になります。血液検査では特異的なマーカーはありませんが、炎症の程度や他の自己免疫疾患との鑑別のために行われます。
乾癬は慢性疾患であり、完治させる治療法はありませんが、症状をコントロールして再発を防ぐことが可能です。治療は症状の重症度や生活への影響度に応じて段階的に選択されます。
外用療法
光線療法
内服療法
生物学的製剤(バイオ製剤)
中等症~重症の患者に対して、インターロイキン(IL)やTNF-αなどの炎症性サイトカインを標的とした注射薬です。それぞれの治療には効果と副作用のバランスがあり、患者様の症状やライフスタイルに応じて選択されます。
当院では乾癬への生物学的製剤治療は行っておりませんが、治療が必要な場合、生物学的製剤治療を行える総合病院や大学病院をご提案させていただきます。
乾癬は見た目の症状が目立ちやすく、患者様が日常生活でストレスを感じやすい疾患です。しかし、治療法の選択肢は年々広がっており、適切な管理により良好なコントロールが可能です。
まずは、皮膚科で正確な診断を受け、状態に合った治療を継続することが大切です。また、自己判断で治療を中断したり、市販薬で対応するのは避けましょう。日常生活では、ストレスや睡眠不足を避け、規則正しい生活とスキンケアを心がけることも症状安定の助けになります。
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