薬物療法
アトピー性皮膚炎の薬物治療では、炎症を鎮め、かゆみを抑え、皮膚のバリア機能を回復させることを目的とします。
アトピー性皮膚炎治療の第一選択薬であり、炎症を強力に抑える効果があります。強さは5段階に分類されており(ストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィーク)、症状の部位や重症度に応じて使い分けます。短期間での集中的な使用が基本です。
プロトピック軟膏(タクロリムス)、コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)、モイゼルト軟膏(ジファミラスト)、ブイタマークリーム(タピナロフ)等、次々とステロイド以外の外用剤が登場しています。ステロイドのように皮膚が薄くなる副作用がないため、長期的に使用しやすいお薬です。
かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑えることで、掻破行動を軽減し、症状の悪化を防ぎます。眠気の副作用が少ない第2世代抗ヒスタミン薬がよく使用されます。
皮膚の免疫に関与する細胞の働きを抑えることで湿疹やかゆみの改善・予防効果があります。安全性が高く、長期的に継続することで皮膚の調子を維持していけることが期待できます。
外用薬でコントロールが困難な重症例には、免疫抑制剤のシクロスポリンが用いられます。短期間のステロイド内服が急性悪化時に選択されることもありますが、長期連用は副作用のリスクがあるため慎重な判断が必要です。
既存治療で効果が不十分な中等症〜重症の患者に対して使用されます。IL-4およびIL-13という炎症性サイトカインを標的とし、かゆみや皮疹の大幅な改善が期待されます。デュピクセントという商品名の注射薬であり、症状が強い場合は強い味方になってくれるお薬です。
スキンケア
保湿剤の使用によって皮膚の乾燥を防ぎ、外部刺激から守るバリア機能の回復が期待できます。入浴やシャワーの直後は、肌の水分が逃げやすい状態にあるため、5分以内に保湿剤をたっぷり塗布することで潤いを閉じ込めることが重要です。保湿剤は患部だけでなく全身に均一に塗ることで、乾燥しやすい部位の悪化予防にもつながります。
また、皮膚を清潔に保つためには、毎日の入浴や洗浄が欠かせませんが、石鹸やシャンプーの成分が強すぎると逆に刺激となってしまうため、低刺激性・無香料の製品を選びましょう。洗浄時には、ナイロンタオルなどで強くこすらず、よく泡立てて手でやさしく洗うようにし、すすぎ残しがないように十分に洗い流すことが大切です。
プロアクティブ療法
炎症が軽快して見た目には改善しているように見えても、皮膚の奥深くには炎症が残っている場合があります。そのため、再発を予防するためには、症状がない時期であっても外用薬を継続的に使用する予防的な治療(プロアクティブ療法)が有効とされています。